INTERVIEW
#004


CASIO

[ABOUT]

日本を代表する電子機器メーカー〈CASIO〉。1946年の創業以来、世界初の小型電子計算機を商品化したことを皮切りに、次々とグローバル展開をしかけ“電卓といえばCASIO”という地位を確率。世界的ブランドとして海外セレブにもファンの多いG-SHOCKの開発や、液晶モニター付きのデジタルカメラを低価格でローンチしデジタルカメラ市場を押し上げるなど、唯一無二の存在となっています。
電子機器とレザー。相反するようにも思えるブランドのタッグにはどのようなストーリーがあったのか、CEO・草ヶ谷昌彦へインタビューしました。

デジタルとレザーの融合

━ CASIOとBROOKLYN MUSEUMの出会いは?

CASIOさんからお話をいただいたことがきっかけでした。
2009年、今も担当してくださっている方からご連絡をいただき「お客様にこだわりを伝えられるケースを作ってほしい」と。

毎回こうしてインタビューで振り返るたびに感じますが、業界や分野は違っても “モノづくり” に熱意をもって取り組んでいる企業様から認めていただけることは本当にモチベーションにつながります。

当時は今ほどレザーグッズブランドが多くなく、さらにカラーバリエーションを豊富に扱っているところはまずありませんでした。雑誌などでも取材していただき、創業者がこだわりを熱弁している特集ページも組んでいただいていたので、モノが好きな方にはきちんと届いているんだ、と実感した瞬間でした。
創業者が時計好きだったこともありますが、G-SHOCKはマストアイテムでしたからね。嬉しかったです。

━ ケースはどの製品向けに?

はじめは電子辞書ケースからスタートしました。
電子辞書といえば、CASIOを筆頭に急速にマーケットを拡大させ、家電量販店でも大きいスペースで展開されていたアイテム。私も学生時代に使っていましたが、さらに進化を続け、より高機能に・コンパクトに、という成熟期だったと思います。

「持ち運ぶことがステータスになるようなケースがほしい」

そんなご依頼から、BROOKLYN MUSEUMのアイコンレザーであるフレンチカーフでプロダクトさせていただきました。
カラーは、オレンジ・ネイビー・サックスブルー・ダークブラウンの4色展開。
今となっては普遍的なカラーですが、その頃はネイビーも含めてまだまだチャレンジングなカラー。
コンサバなカラーにする案も出ていましたが、私たちが掲げていた色のチカラを信じてオーダーしてくださる企業姿勢に感動しました。

━ 電子辞書にきれいなカラーのレザーケース…つい持ち歩きたくなりそうですね。その後はどういった取り組みを行ったんですか?

同じタイミングでデジタルカメラケースの製作も行いました。
カラーは電子辞書ケースと同じく4色展開。内装には爽やかなブルーストライプの生地を使い、SDカードの予備などもセットできる仕様に。
ブルックリンでは展開してこなかったコンビネーションだったので、顧客様の中には、小物入れとしてご購入いただいた方もいらっしゃいました。反対に、ケースきっかけでブルックリンを知ってくださった方も。
新たな顧客層へアプローチさせていただく機会をいただきました。

ニッチポイントこそニーズがある

━ なるほど。そこから少しの期間を経て2017年に再コラボが実現していますが、それはどういった経緯だったんですか?

当時、そうはいってもコストをかけてまで電子辞書を入れるケースにプライオリティを置く方が少なかったのは事実。
「改めて企画を練りましょう」とそれぞれで検討している中、私たちも海外との取り組みや商品開発、青山本店の移転などを経て、多くのお客様と出会い、様々な知見が蓄積されていきました。
さらに、“こだわりのモノを持ちたい” “良いモノを永く使いたい” という時代の流れもプラスされ、よりピンポイントであり、パーソナルなアイテムが好まれる傾向に。
そんなとき、「S100」専用ケースの企画がスタートしたんです。

━ S100とはどういったモデルなんですか?

CASIOが“究極の機能美”を追求し、日本の技術を集約させたプレミアム計算機がS100です。
私は仕事で電卓を使い込むことがないので、3万円というプライスを聞いたときは、正直かなり驚きました。
ただ、高級店や高額な商品を取り扱う商談の場でも、実は数百円から数千円程の電卓が使用されていることや、会計士や税理士、営業という分野で日々数字と接するプロフェッショナルたちに「持つ誇り」「使う悦び」を感じてもらえる電卓を作りたい、という想いを伺ったとき、時代に沿ったニーズを確信しました。さらに、S100は「Made in Japan」にこだわり、全ての生産を山形工場で行うという点も、企業としての強い意志が伝わってきました。二つ返事でご連絡したことを覚えています。

日本製であることの誇り

━ 企画を進めるうえで大切にしたことはありますか?

プロダクトコンセプトとしては、「包み込み、時とともに手に馴染んでいく」。
そして、あくまでも主役はS100。商談先でも主張しすぎず、クラス感をアップさせるシンプルさを追求しました。

2017年の発売以来ご好評いただいており、何度かモデルチェンジを行いながら、シーズンによっては限定アイテムを製作したりと、幅広い世代の方に楽しんでいただけたら、と考えています。
私たちがこだわり続けてきた「Made in Japan」の誇り。そして、私自身が職人なので、お客様からのフィードバックを次のモノづくりへしっかり反映できるんです。
有難いことに現在も定番カラーの追加生産を進められているのは、そういったバックグラウンドも含め信頼していただけてるのかな、と思います。

━ ケースに使われているレザーを触らせていただきましたが、すごく滑らかで優しい肌触りでした。どのようなレザーなんですか?

現モデルで使用しているレザーは、イギリスに本部を置く〔ブランド、タンナー、薬剤メーカー〕3社で構成する国際監査団体「LWG(Leather Working Group)」に日本で初めてLWG認証を取得し、現在はその中でも最高位であるゴールドランクに昇格した皮革会社 「(有)繁栄皮革工業所」と共に開発したスムースレザーです。

北米産の原皮を使用しているので、繊維質が柔らかく、使い込むほどしなやかに電卓へフィットします。
さらに、透明感のあるカラーが特徴です。厳格な世界基準の手法をとり、環境面に配慮した持続可能(サスティナブル)な染色方法をセレクトし、ブラックやネイビーなどのシックなカラーでも重くなりすぎないよう調整していただきました。

シンプルなデザインと、飽きのこないカラー。そして質の良いレザー。永くご愛用いただけたら嬉しいですね。

━ 良いものを永く愛用することこそ、サステナブルですよね。

常に良いモノを提供し続けたい、というCASIOさんの想いと、私たちのモノづくりへのスピリットが共鳴したコラボなんです。

S100専用ケースを手がけているブランドは日本で3社。
世界的バッグメーカーの〈PORTER〉、400年以上の歴史を持つ〈印傳屋〉、そして私たちBROOKLYN MUSEUMです。
日本を代表するラインナップの1社として選んでいただいたことはこれ以上ない光栄ですし、背筋が伸びる想いです。

以前、藍染めのケースを数量限定で販売した際もお客様からご好評だったと伺いました。
やはり、日本の技術や魅力を、日本のブランドが、国内だけでなく世界へ伝えていく必要があるんですよ。その一歩こそ大切な技術を次世代へ受け継ぐバトンになる、そう感じています。

CASIOさんのような電子機器の技術も、私たちのようなレザーの技術も、支えているのはたくさんの職人さんたち。
今後も、様々な角度から手仕事の魅力を発信していけたら、と思っています。


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