[ABOUT]
1979年、東京で創業したBROOKLYN MUSEUM。888年、京都に創建された仁和寺。レザーブランドとお寺。接点のないように見えるニ者が、時間と場所、そしてジャンルを超えてこれまでにない取組に挑戦しました。
お互いの持つ魅力や強みを補完しあいながら、文化や願い、気持ちの架け橋を目指したアイテムは、どのように誕生したのか。
プロジェクトに携わった革職人兼CEO 草ヶ谷昌彦とデザイナー兼COO 内藤晴美の特別インタビューを掲載します。
INTRODUCTION
#007
世界文化遺産
総本山 仁和寺
世界文化遺産・仁和寺との出会い
━最初に今回の件を聞いたとき、どう思われましたか。
草ヶ谷:驚きましたね。仁和寺?京都の?あの世界遺産の!って。本当に光栄なお話です。
中学生のときに修学旅行で仁和寺を訪れたのですが、数十年経ったいまでも鮮烈な記憶として覚えています。
だから、今回の件で再訪して、感動もひとしおでしたね。あの日見た二王門は、変わらず荘厳なままでした。
━そもそも、今回の取り組みは、どのように始まったのでしょうか。
内藤:以前、一緒にお仕事をした方からお話をいただきました。昨今の訪日外国人客の増加を受け、仁和寺にも世界中からたくさんの方が訪れているそうです。
そうした中で、外国人だけじゃなく日本人の間でも仁和寺への興味関心を高めて欲しいという思いから、それを具体化する試みができないかと模索されていました。
そのお話を聞き、私たちがそのお手伝いを革で表現出来れば、と率直にワクワクしました。
━レザーブランドとお寺のコラボは異色な印象ですが、お話はスムーズにまとまったのでしょうか。
内藤:ご挨拶を兼ねたお打ち合わせをオンラインで行わせていただいたのですが、その1回で内容がほぼ決まり、とてもスムーズだったんです。
━たった1回で?それはすごい。どんなお話をされたのでしょうか。
内藤:由緒正しいお寺との打ち合わせなので、私たちは少し緊張しながら参加したのですが、お寺の方々は私たちの緊張を察していただいたのか、とても気さくに明るくお話をしてくださったおかげで、私が思い描いていたアイテムを次々とその場で提案をさせていただいたんです。
草ヶ谷:実は、打ち合わせ前は、お寺とレザーアイテムって、動物の皮を使うことは、宗教的にネガティブなんじゃないかって、心配し、率直に「大丈夫でしょうか?」と聞いてみたんです。
その話をしたら、「太鼓も皮を使ってますから、気にしないでください」と、優しく背中を押していただいて。私たちの提案についても、その場ですぐにご意見をくださって、そのおかげで、初回からかなり具体的なお話をすることができましたね。
━企業の会議みたいなスピード感ですね。伝統と格式があるお寺だから、調整や確認事項が多いのかと思っていました。
内藤:まったくそんなことはなく、むしろ、革新的で先進的な印象を受けました。
草ヶ谷:仁和寺の方々の懐の深さもあり、かなり自由度高くやらせていただけることになりました。胸が高鳴る打ち合わせでしたね。
寄り添う発想から生まれたアイテム
━今回のアイテムは、どのようなステップで具体化していったのでしょうか。
草ヶ谷:4月にお話をいただいて、5月にオンライン会議、7月中旬にサンプルを持って京都で打ち合わせ、8月下旬に最終確認、という流れで進んでいきました。
内藤:全体的にかなりテンポよく進み、中でも、デザインの工程はかなり早かったと思います。
草ヶ谷:デザインは一週間もかからなかったよね。
━一週間は早いですね。
内藤:実は、前々からあたためていたアイディアがあったんです。今回のラインナップは、御朱印カバー、お守りカバー、参拝で使えるサコッシュなどですが、どれも数年前から「あったらいいな」と思って構想を練っていたんです。
━なるほど。それは、参拝のときにひらめいたのでしょうか。
内藤:いえ、日常の中です。お守りを持ち歩く方は多いと思いますが、私は当時、お財布の中や名刺入れにお守りを入れていて。そうすると、お財布や名刺入れが膨らむ。お守りを単独で、“お守りが居心地いい場所”に置いてあげたいな、と思ったんです。そこで経年変化を味わえるレザーやカラーを愉しめるレザーでお守りカバーをデザインしたいなと。
あと、子どもが小さかった頃、どうやってお守りを持たせればいいのか、ちょっと 悩んだことがあったんです。大人はお守りを失くす人は少ないと思いますが、子どもはすぐ失くしちゃうんじゃないかなと心配で。なので、チェーン付きのお守りカバーがあれば失くしずらいかなと思っていたり、ひらめきは常に日常の中にあります。
━普段から “見せて使える” デザインだったら、用途も広そうですね。
内藤:そうですね。違和感のないファッションアイテム的なお守りカバーがあったらいいですよね。
例えば、ビジネスシーンでプライベートなお守りは見える形でつけにくいですが、お守りカバーに入れれば、ひとつのファッションとしてつけることもできると思います。“ちょっとした懸念点” を解消できる、新しい選択肢になれれば嬉しいですね。
点と点をつないで文化を届ける
━デザインを具体化するにあたって、こだわったのはどのような点でしょうか。
草ヶ谷:素材にこだわりました。日本を代表するお寺で、国内外から多くの方が訪れる場所にふさわしい要素は、“日本らしさ”であると考えました。そこで、日本の職人の技術が感じられ、ひとつひとつ模様が違う一点ものの芸術品のような「柿渋染め」と、日本が育んだ牛の美しい質感を感じられるオール・メイドインジャパンの「ヤマト」を採用しました。
━「柿渋染め」も「ヤマト」の魅力を外国の方にもっと知っていただきたいですね。
草ヶ谷:そうですね。仁和寺の方によれば、外国の方はお土産を買う方よりも御朱印を授かったり、坐禅をするなど、“体験”に重きを置く方が多いそうです。
今回のアイテムを通して、参拝したことや御朱印を授かったことを思い出していただければ嬉しいですし、時が経つほど深みを増す美しい記憶とともに、レザーのエイジングも楽しんでいただけたらと思っています。
━レザーアイテムを通して、日本と海外がつながる瞬間ですね。
草ヶ谷:今回、「日本と海外」をつなぐ架け橋になることを強く意識しました。同時に、仁和寺の1200年の歴史に凝縮された文化を現代に生きる人が知るきっかけになれたら、「過去と現在」をつなぐ存在になれたら、とも考えました。
さらに、普段お寺や参拝に興味がない方が関心を抱くきっかけになれたら、逆に仁和寺に参拝する方がレザーアイテムに興味を持つ入口になれたら、「お寺とファッション」を繋ぐことができればいいなとも思っています。
━BROOKLYN MUSEUM✕仁和寺が様々な繋がりを生みますね。
草ヶ谷:これがきっかけで、新しい繋がりが広がっていけば嬉しいですね。
━最後に読者の方にメッセージをお願いします。
草ヶ谷:様々な思いを形にしたアイテムなので、手にとっていただけたら嬉しいです。
そして、ぜひ仁和寺にも訪れていただければと思います。今回、十数年ぶりに仁和寺を訪れたのですが、7月の猛暑の日だったにもかかわらず、敷地に入った瞬間、外よりも温度が低く、空気も澄んでいるのを感じました。
心が洗われるような体験でした。見どころは、ご本尊の国宝・阿弥陀如来坐像です。
人生で一度は見るべき至宝だなと思いました。そんな仁和寺が持つパワーをレザーに乗せて届けられれば幸いです。
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仁和寺
888年(平安時代・仁和4年)、宇多天皇により創建された寺院。現在は真言宗御室派の総本山。1994年(平成6年)に世界文化遺産に登録された。ご本尊の阿弥陀如来坐像(国宝)は、腹前で定印を結ぶ現存最古の阿弥陀像としても知られている。
