ハマリビト

日常に豊かさをもたらせてくれるコト・モノ。

流行を追うのではなく、「私はコレ」という強い決意にも似た潔い大人に心が惹きつけられるような気がします。

ブルックリンミュージアムが気になるアノ人をフィーチャー。

楽しんだり、もがいたり、それぞれの未来を想い描く方々をご紹介する連載企画です。

ハマリビト


塩崎史乃さん
(株式会社goen° プロデューサー)

 

株式会社goen°にてプロデューサーとして働く塩崎史乃さん。これまで音楽や映画、アートディレクションなどのカルチャーで第一線で活躍する人々とともに経験を積んできた塩崎さんは人と人をつなぐ“ご縁”を大切にしています。その仕事に対する熱い想いや自分らしくいられるモノ選びまで、お話を伺ってきました。

━まず塩崎さんはどのようなお仕事をされていますでしょうか?

塩崎さん(以下 塩): goen°という会社で企業広告やそれに伴うグラフィックデザイン、CM制作、企業ブランディングとしてのロゴ制作や、時にはPR動画を制作したりしています。また、ミュージシャンのアートワークなどを行う一方で、まちおこし事業のお手伝いをさせていただくなど、本当に多岐にわたって活動させていただいてます。

最近はmono°goen°(モノゴエン)というECサイトも立ち上げました。

━ 主宰はアートディレクターの森本千絵さんですね?

塩:はい。代表の森本はアートディレクターであり、コミュニケーションディレクターという肩書きも持っているのですが、本当に人をつなげることが上手い方で“ご縁”を作るということを体現されている方です。

その中で、私は“ご縁プロデューサー”という肩書がありまして、マネージメント業務、プロジェクト全体の進行管理などのプロデュースをしています。

━ このお仕事に至った経緯を教えていただけますでしょうか?

塩:様々な経験とご縁が繋がり今に至っているのですが、20代前半から「人と人をつなぐ」ということにずっと意識を置いていたこともあって、goen°のモットーである「出逢いを発明する。夢をカタチにし、人をつなげていく」に出会ったことで、自分が思い描いていたものにぴったりだと思ったのです。

そして前職で偶然にもgoen°にお仕事を依頼することがあり、元々素敵だなと思っていた気持ちに、さらにそこで目にしたスタッフさんの対応や事務所の雰囲気が、私のgoen°に対する恋心に変わりました。

━ 音楽、映画、アートディレクターなどカルチャーにおけるクリエイティブの中で、第一線で活躍されている方々のところで働いていらっしゃったのですね。

塩:そうですね。これらのカルチャーは私の人生の中で切り離せないものでして、その中で出会ってきた方々がおのずとミュージシャンなどクリエイティブな方が多かったんです。そのルーツを辿ってみますと、私の祖父が舞台の演出家だったので、その影響で何かを作ったり書いたりするのは幼少期から自然と好きでした。

飲食業界での接客も長くやっていたのですが、音楽と触れ合う機会が年々増えていき「今後はクリエイティブな業界に身をおこう」と決意し、この世界に入りました。

━ なるほど。では、今の仕事でやりがいを感じるのはどのような時でしょうか?

塩:会社全体でも言えることですが、お客様にいただいた仕事を全てもおいて“自分ごと化する”ことを大切にしています。そしてクライアントとお客様の両方の気持ちに立って、この商品をどんな想いで生み出したのか、世界観は?どんな人に手に取って欲しい?自分が受け取った時に嬉しくなるもの?などなど様々な“?”を常に抱えて、仕上げてもらったデザインを、さらに丁寧にクライアントにお届けする、いわばクライアントとデザイナーの間の橋渡し役ですから、時間の無い中でスムーズにプロジェクトを進行させられたものほど、満足度も高い気がします。

一つのプロジェクトでデザインを依頼されたときは、2〜3案を提案するのが一般的かと思いますが、goen°では相手の予想を上回る案数を一冊の企画書にしてご提案しています。

そうするとやはりお客様は驚かれますし「そんなに考えていただいたのですね!」と喜んで頂けます。そんなシーンを目の当たりにするたびに「すごくいい仕事をさせていただいているな」と実感します。ひとことで言うとお客様に寄り添うイメージですね。

━ お客様が喜ぶ顔を見たいから、自分ごと化するということですね。

塩:まずはそこが第一だと思います。さらにそこで生まれた想いが発想やデザインに派生して新たな商品を生み出すことも見てきているので、“自分ごと”というのはかなり大きなキーワードだと思ってます。

━ では、仕事の中で大切にしていることは何でしょうか?

塩:どんな仕事もサービス業だと思ってますので、相手に対して“優しくあること”は心がけています。プロデュース業というのは気配りの仕事ですからね。

プロジェクト進行中のお相手でも、ご提案までほったらかしではなく、何気ないタイミングでメールを入れて一言、二言でもやりとりをすることで「今こんなことを考えているんだ」とわかり、それをキャッチアップしてデザインに落とし込んでいけることもあります。このように、お客様と制作の風通しをよくしておくのが私の大事な役割なのかなと思っております。

それが最終出来に“自分ごと化”に繋がっていくのだと思います。

━ そんな塩崎さんが物を選ぶ時、共通した基準はありますでしょうか?

塩:シンプルに言いますと「自分の気分が上がるもの」をチョイスします。また、ストーリー性があるものや、作り手の体温やルーツが見えるものは、手に取りやすいかもしれないですね。美しいものなど見た目の部分も重要ですが、物の背景を大切にしています。

また、一度好きになったデザインは、色違いで揃えたくなるほど気に入ることが多いので、必然と長く愛用することになります。

━ 流行とはまた別の選び方ですね。自分自身が心地よく居られる要素を大切にされていらっしゃるのですね。

塩:そうですね。流行ではなく、自分という軸で選んでいますね。少し大袈裟かもしれませんが、そうすることで、自信につながりますし、「私のスタイルはこれです」と相手に分かってもらうツールでもあると思います。

━ では、自分らしい生き方とはどのようなものだと思われますか?

塩:今まで自分にも他者にも厳しく、というのが長所であり短所でもある人生でした。ただ、自分が心地よくないことはちょっとやめにしようかと思っています。

自分に厳しいというのは、ある意味真面目で美徳とされる部分ももちろんあると思いますが、それで何かを制限してしまったり、犠牲にするのは、自分を愛することにつながらないのでは? とここ何年かで気づきました。

例えば、仕事ひとつとっても、チームワークが必要となることがほとんどで、自分だけが頑張ればいいというわけではありません。時には自分を追い込みすぎず、人に頼ったり甘えたりするのも大事だなと。そうやって自らを楽にしていくことで、おのずと自分らしい生き方につながっていくと思っています。

━ 時には自分にご褒美をあげてみたり、ということですね?

塩:そうですね。このブルックリンミュージアムさんでオーダーして自分だけのものを作るというのもご褒美のひとつだと思っています。自分が今やりたいことに忠実に向き合うと、ストンと腑に落ちる瞬間があって、そういうことの積み重ねで自分を解放してあげることを大切にしています。

また、自分の失敗は認めてあげる、ということもできるようになろうと意識しています。なぜできなかったのかと自分を追い詰めるのではなく、「できなかったのは仕方ないから次がんばろう」と気持ちを切り替えるということを大事にしたいなと考えるようになりました。

━ 最後に、人生1回きりですがどのように生きたいと思われますか?

塩:自分が好きなことをなるべくやる、ということですね。目の前で起きている現実は自分が生み出しているものだと思います。自分がハッピーでいるには、そうありたいと思い描くことが大切で、そうすることで理想の現実に近づいていくと思います。

なので、好きな人たちと一緒にいたり、好きなことをやるということをなるべく選択していきたいと思っています。

私の偏愛アイテム Best 3

FAVORITE1
代表からもらったゴエン


塩:仕事で名刺と一緒に“ご縁” がある方に渡すためのゴエンをいつも持ち歩いています。これは前職でお仕事を依頼し、初めて森本にお会いしたときにいただいたゴエンです。これを常にお財布に入れています。

今はこれを渡す側になりましたが、こちらは私がいただいたものとして大切にしています。

FAVORITE2
ベツレへムパールのネックレス


塩:ベツレヘムパールと言いまして、キリストが生まれたとされる地、ベツレヘムで1930年代から50年代にかけて作られていたヴィンテージのパールを使ったネックレスです。昔、修道院の方々が持っていたアイテムで、一つずつ職人の方の手彫りで作られています。

前にテレビでこのパールを特集されているのを見まして「すごく素敵だな。どこかで出会いたいな」という思いがずっとあって。ある時、展示会をやっているというのを友人のインスタグラムで発見し「私が求めていたものだ!」と、すぐに展示会の予約を入れ、そこでやっと出会えました。

これも人の想いが込められているもの。身に着けていると不思議と守られている感覚になります。

FAVORITE3
corneilleの食器シリーズ


最近出会った尾山台にあるうつわ屋さん「corneille」で扱われている食器のシリーズ。自分の好みに合った器でいただく食事は、お腹だけでなく気持ちも大きく満たしてくれるということを再認識させてもらいました。作家さんとの面識はなくても、器の質感から何となくではありますが、その方の人柄が思い浮かぶ気がします。

愛用するブルックリンミュージアム

塩:年齢を重ねるにつれ、少し背伸びをしてでも上質なものを持つ、そこで自分の気持ちを高めたり、背筋を伸ばす感覚を大事にするようになりました。

5年ほど前、当時お財布を作りたいと思っていろいろお店を探していた私は、知人から革製品をフルオーダーで作ってくれるお店があると紹介してもらい、ブルックリンミュージアムさんに初めて伺いました。

初めてのフルオーダーで緊張する私に、オーナー自らとても丁寧に製品の説明をして下さり、そこから製品への愛情もたっぷり伝わってきたので、ぜひこちらでオーダーしたい!と思ったことが、きっかけで今のお付き合いに至っています。

今、私が使っているお財布と小銭入れは今年新調させていただいたものです。

━ 綺麗なカラーの新鮮なアイテムですね。

塩:そうなんです。実はこれ2代目でして、初代は5〜6年前に同じ色でオーダーさせていただきました。この色は私にとって経済が活性化するカラーだと伺い、長財布を持つならぜひこの色にしたいと思っていました。

革から中面、糸のカラーまで全てフルオーダーできるということで、代表であり革職人の草ヶ谷さんに親身になって聞いていただいたおかげで、思い描いていたモノを作っていただきました。

初代が経年で汚れが気になってきたので、思い切って、ほぼ一緒のものを作ってもらいました。初代は中面を明るいクリーム色にしていましたが、今回は濃厚なネイビーで、ステッチは表の色に合わせていただきました。

━ 小銭入れも同じカラーでオーダーされたのですね。

塩:はい、長財布にも小銭入れはついていますが、カードを入れるとどうしても膨らんできてしまうので、それであれば分けて持ちたいと思い、新たにコインケースを作っていただきました。

基本的には荷物をあまり持ち歩きたくないので、ちょっと出かけるときなどは、この小銭入れだけで事足りています。

長財布も小銭入れもなかなか外では見ないカラーなので、声をかけてもらい褒めていただくことも多いです。世界で一つだけのデザインというのがまた素敵ですね。

Photo:Taku Amano

Edit & Interview:Takafumi Matsushita