2019年 創業40周年を迎え、世代交代。
2020年 「Change! Don't be afraid.」を掲げ、
二世代目スタッフ全員が
変化を楽しむ年にしていこうと誓った半年前。
いま、スタートすることの意味。
オウンネームブランドとして見据える未来。
仕立て人・草ヶ谷 昌彦へインタビューしました。
──BROOKLYN MUSEUMと、MASA KUSAGAYA。
代表であり、職人であり、仕立て人。
どのような経緯でオウンネームブランドの立ち上げに至ったのでしょうか。
「実は、自身が代表という肩書きになった8年前から頭にあったものでした。
しかし、BROOKLYN MUSEUM というブランディングはもちろん、経営、職人の育成、レザー開発、そして自分自身の技術をもっともっと高めていくこと。
これらを安定させようと必死になっている間はまだ難しいと思っていたんです。」
ベストメンバーが揃った。
「昨年(2019年)完全に世代交代を終えたとき、一歩を踏み出すための準備ができた感覚がありました。この時期にスタートするのは必然だと感じています。
いま、BROOKLYN MUSEUMを支えてくれるスタッフ、職人さんたち、タンナーさん。全ての方々を心から尊敬できる。任せられる。そう感じたからこそ、自分自身が冠となるブランドをスタートさせようと、動き出したのです。」
──どういったコンセプトのブランドなのでしょうか?
「当初、コンセプトはあまり深く考えていませんでしたが、しいて挙げるとすれば〈旬〉。
このブランドではレザーブランドで必須となる抜き型は作らず、全て包丁で切っていく“手断ち”の手法をとります。なぜなら、そのとき「良い」と感じたアイテムを、 そのとき一番クオリティの高いレザーで仕上げることが可能になるからです。
あえて型を作らず仕上げていくことは、少しでもブレが生じれば完成度が落ちる。少しのブレも許さない、自分自身への挑戦でもあります。」
その瞬間を感じるプロダクト。
「BROOKLYN MUSEUM のアイテムをイメージするとき、シンプルかつ正統派なアイテムに、カラーというスパイスで甘みをだしたり、辛口に仕上げたり、味わい深さを表現したり、そんなことを意識しています。
MASA については、もっと瞬発性を大切にしたいと感じているんです。
スケジュールはあえて立てず、その時々で湧いた感情を表現していく。採れたての野菜、新鮮な魚。その日によってベストな状態を見極め、味付けをしていく──ある種、料理もアートのような側面をもっていますが、レザーを仕立てることも、それに似た感覚なのかもしれません。なんて・・・畏れ多いことを言っていますが、そんな未来もイメージしています。」
──レザーも違ったバリエーションになってくる?
「いま、まさに進行中のプロダクトは、BROOKLYN MUSEUM では扱ってこなかったレザーをメインにセレクトしています。
今回は、知る人ぞ知るイタリアの名門タンナー・イルチア社の《ラディカ》をメインレザーとしてピックアップしました。
雲海に絵の具を垂らしたようなタッチは、なんと一枚ずつ手作業で染色されています。染色の質もさることながら、 革のクオリティは最高クラス。
カーフのキメ細かさと、ガラスのような光沢。
革好きはもちろん、誰もが惚れ込むテクスチャーですね。」
タイムレス、そしてボーダーレス。
「メインレザーはもうひとつ。《藍染めクロコダイル》です。
こちらは皆さんもご存知のとおり、BROOKLYN MUSEUMで長年愛されてきたレザー。
日本の匠たちが一枚一枚細心の注意を払って仕上げられた、世界へ誇るべき技術の結晶です。
新たにスタートするものと、これまでの歴史とのリンク。
国境を越えた芸術的な技術たちのリンク。
素晴らしいモノに、年月や国は関係ありません。
そんなことを、MASA KUSAGAYAで表現していければと思っています。」